冬の西穂独標の旅

やまのぼり

出発までに考えていたこと

私の場合、冬期は毎年2座くらい登ることが多くて、昨シーズンは唐沢鉱泉から天狗岳と、木曽駒ヶ岳に登りました。その前の年はコロナ禍もあって北アルプスの唐松岳だけ。
で、今シーズンは1月に雲取山に登ったんやけど、雪は山頂付近に5cmくらいしかなくて、アイゼンを使うこともなく、ガッツリ冬山に登った気はしていないので、どこかもう一座登っておきたいなぁ〜という悶々とした思いがありました。
どこに登ろうかな、と色々考えるのが楽しくて、久しぶりに谷川岳にしようか、まだ登ったことがない武尊山にしようか、やっぱり八ヶ岳に行こうか、など考えましたが、今回は久しぶりに冬期のテント泊がしたくて、西穂山荘でテント泊して独標へ行こう、と決めました。ただ私の力量で独標のあの核心部を登ることができるのかよく分からず、無理だったら引き返して、テント泊を楽しんでこよう、と気楽な気持ちで出発することにしました。

今回は高速バスの旅

バスで行くことにしました。今回は1泊の旅だし、西穂山荘のテント場までの行動時間も短いし、何しろ雪の加減が読めず車で行くのはやや気後れがした、というのもあります。東京から平湯温泉へ高速バスで向かい、平湯温泉で新穂高ロープウェイ方面のバスに乗り換える旅程。
新宿7:05の運行に乗車して、平湯温泉には11:45到着予定。そして乗り換えるバスが12:38発で新穂高ロープウェイ13:16着。乗り換えの間にお昼ご飯でも食べようか、という感じ。でもワンチャン、バスが早めに平湯温泉に到着したら1本早いバスに乗り換えることができるかも、となんとなく考えていたら、どうやら10分ほど早く着きそうで、到着の数分前、安房トンネルを走っている間から、早く乗り換えないと、とソワソワし始めて。
そして平湯温泉のバスターミナルには10分早く11:35に到着。乗り換えバスの出発まで5分あるので、急いでチケットを買って乗り換えのバスを探していたら、あれ?全然いない。。新穂高ロープウェイ行きバスは高山から発車しているバスで、その到着が少し遅れていて、10分くらい遅く到着。余裕を持って乗り換えることができた。山行の時間にも少し余裕が生まれてよかったです!

■バス時刻表(新宿→平湯温泉→高山)

■バス時刻表(平湯温泉→新穂高ロープウェイ)

※時刻は最新のものを確認してください。詳しくは濃飛バスのサイトへ。

ロープウェイを降りて山登りスタート

12:25頃に、新穂高ロープウェイに到着して、まもなくロープウェイに乗車。ロープウェイは第1と第2と乗り継いで西穂高口駅へ。料金は往復で3300円。ただ6kg以上の荷物がある場合は600円の追加料金。テント泊装備で15kgは背負っていたので、特に計量することもなく申告して600円をお支払い。ロープウェイの乗り始めは霧で何も見えなかったけど、標高を上げていくにつれて、笠ヶ岳がドーンと。いやぁ〜これには感動した。これを見るだけでも価値があります。でもこれから山に入るのが少し怖くなったりもしました。

ロープウェイは観光客が多くて、それも外国の方々がほとんど。日本人も私ともう1組のご夫婦だけだったと思う。日本のインバウンドは円安もあって活況だけど、こんな山奥まで来られるとはね、海外から登山客やトレッカーもたくさん来る時代になるといいな、と思います。

せっかくなので登り始める前に、展望台で展望を楽しみました。ここからの景色は迫力ありますね!

こちらは焼岳。いつか登りたい!

そして我らが槍ヶ岳! 先っちょの方しか見えませんが、見えるだけでいいんです、槍ヶ岳は。
こちらもいつか登りたい!

そして今回登る稜線がこちら。写真の右手にテント場のある西穂山荘。そこから徐々に左手へ標高を上げて一つ目に見える黒い三角のピーク、それが西穂高独標です。今回目指すピークはそこ!
いやぁでも本当にいけるんですかね〜。

西穂高口駅の付近は、かつて千石園地と言われていたところで、2022年10月に「頂の森」としてリニューアルオープンされていて、ブーメラン状に張り出した展望デッキ「槍の回廊」がある。ここからは槍ヶ岳の穂先がちょこっと見えて、軽装備でもこの展望を味わえる素晴らしいところでした。ここをスタート地点として登山開始です。緊張が高まりますね。

まずは西穂山荘を目指します。コースタイムは1時間30分。積雪はおそらく2mくらいですかね。夏場だと樹林で眺望が見えないところでも、積雪のおかげで木の合間から目指す山々が見えたりします。

西穂独標へプッシュ

元々のプランでは、初日は西穂山荘のテント場でゆっくりして、2日目の朝に独標へ登頂するように考えていたのですが、実は初日の夜から2日目にかけて荒天が予想されいて、おそらく2日目は標高上げることは難しいだろう、と判断しました。なので、初日のうちに独標まで登ってしまい、2日目は下山するだけとプランを変更しました。このプラン変更も、平湯温泉から新穂高ロープウェイへのバスを1本早いものに乗車できたから、こそではあります。
1時間少々で西穂山荘に到着し、早速テント泊の受付。サクッとテントを設営して、今日のピークへプッシュ。必要最低限の装備にして、独標へ登り始めます。この時、時計はすでに15時。2時間半で登って帰って来られるだろう、という目論見。仮に思ったよりペースが悪かったり、視界不良や日没が気になれば撤退することを常に頭に入れながら、スタートしました。

夜から荒天という予報はありましたが、幸いにも風はそれほど強くもなく、晴天ではないものの、視界も問題なし。一歩一歩前に進みます。登り始めて30分くらいで、西穂丸山という一つ目のピークに到着。5年ほど前の夏にここに来た時にはガスガスで何も眺望は見えなかったけど、今日はこんなに雄大な景色を堪能することができました。

この丸山から見える稜線は一気に標高を上げる形となっていて、なかなかハードそう。正直、ここ西穂丸山からの雄大な景色で満足感は高かったのですが、「一つ先へステップアップしたい」という山好きの変な上昇志向もあって、もうひと頑張りすることにしました。でも、西穂独標は初挑戦なので、どれくらい難易度が高いのか、自分の力量で果たして登ることができるのか半信半疑ではありました。なので、ひとまず独標の取り付きまで行って、怖さを感じたり、登れないかも、という心情が少しでもよぎれば撤退すると決めて、先へ進むことにしました。

丸山から標高を上げていくと、間近に独標が見えてきました。あの台形の黒い岩のピークが西穂独標!この時「ウォー!」って大きな声を出した、と思います。ある意味、雪山登山では憧れのピークで、今まで雑誌やSNSなんかでも何度も見てきたピークです。まずは取り付きまでは行こう、と。その先はその場で考えよう!と言い聞かせて。
前日見ていた天気図では結構強風になるかも、とあったので、かなり警戒はしていたのですが、幸いにも風はあまり吹いていなくて、コンディションは問題なし、と判断しました。

独標の手前は少し切り立ったところを歩きます。雪は少なめだったのですが、雪と岩のミックスは、アイゼンを引っ掛けたりするのが危ないので、慎重にゆっくり一歩一歩歩きます。でも後で動画見ると、案外と歩が早くて、かなり気持ちが昂っていたかもしれません(自分ではかなり慎重には歩いてはいたので集中していたと思います)。

いよいよ取り付きまで来ました。ここから上は独標の核心の岩場です。少し空は陽が落ちて来ましたが、明るいうちに下山できる時間帯です。岩場は雪が少なめで、アイスバーンのようになっているところもなさそう。ラッキーなことにほぼ無風に近い状態。焦らずに慎重に行けば問題なさそうだったので、登ることにしました!ピークに微かに見える標識。アレですね!

西穂独標に登頂!

あと数十メートルのところまで来ました。この時点では楽しくてしょうがありませんでした。雪が少ないですね。斜度のある岩場で強風が吹くところですし、直近数日はとても良い天気だったようなので、コンディションはいいと思いました。足場も手で捕まる部分もあるので、今日のコンディションであれば難易度は比較的易しめだと感じました。もちろん油断は禁物ですが、ここからは慎重に、そして楽しみを噛み締めて登りました!ここまでの疲れはどっかに吹き飛んでいましたね。

最後はしっかりピッケルを効かして登ります。最後、リーシュコードをアイゼンの爪に引っ掛けたりしまして解くのに1分くらいかかってしまいましたが、冷静に対処して、遂に、西穂高独標のピーク(2701m)に到着することができました!!

この様子は動画でも公開しているので、ご覧いただけると嬉しいです。

そして下山。独標の核心部の下りは慎重に慎重に、一歩一歩確認しながら下りました。幸いにも雪の状態は良かったので、それほど怖さは感じず、アイゼンを効かせて、岩をつかみながら、無事に鞍部まで下りることができました。ここまで下りれば、あとは山荘のテント場まで30分もあれば到着できる。日が暮れる前に帰れそう。

下山時は、充実した満足した気持ちでいっぱいだった。もちろん、強者は独標の先、西穂高岳まで行くんでしょうけど、いつか私もチャレンジしてみたいと思います。でも今回の山行はギリギリまで天気予報や天気図と睨めっこだったので、ここまで登らせてもらった山の神様に感謝です。
あとは、のんびりテント泊を楽しんで、明日気をつけて帰ろう、と少し甘い考えをこの時は持っていました。

一晩ずっと雪が降る中のテント泊

無事、テント場に到着。まもなく暗くなりそうなので、着替えとかをマットやシュラフを整えて、ご飯作り。

夕飯はアルファ米と、なめこ豚汁。家から野菜や肉やなめこ、もちろん味噌も持ってきての調理。JetBoil は最高の仕事をします。テントの中での調理ですが、一酸化中毒には十分気をつけながら、もちろん換気をしています。ステラリッジテントは難燃でもあるので。写真を見てもらったらお分かりだと思いますが、3人前くらいは余裕でありましたね。でも他に食べるものもないので、これを完食しました。

そしてあとは寝るだけ。天気予報通り、どんどん雪が降ってきました。夜中に2回ほどトイレで目を覚ましましたが、その度に、周りが積もってトイレまでの距離が遠く感じられるように。。。雪が降ると意外と寒くなくて、ちゃんとは測っていないけど、この日は多分マイナス2〜3度くらいまでだったと思います。結構昔にテント泊した5月の涸沢カールの方がよっぽど寒かったですね。雪が止む気配がなくて、テントが雪でどんどん押され始めて、テントの中の頭の周りが雪の重みで弛み始めて、だんだんと狭くなっていくのがわかりました。その都度、中からテントを押し返して雪を飛ばしたりしていました。このステラリッジテントで、通常のフライシートではなくて、スノーフライを使ったんだけど、このスノーフライの優秀さを感じました。生地がサラサラしているのかな、凍結もしにくいので、破損する心配もなく、通気性もいいみたいで結露しないのにはマジで驚きました。安心のモンベル製品ですね、迷ったらモンベル製品を購入しておけば間違いないです。なんといってもリーズナブルだし、モンベル製品のおかげで我々はいろんなスタイルの山登りを楽しむことができて助かっています。

雪ですが、朝起きたらこんな状態。積雪は一晩で多分 30〜40cmあったんじゃないかなと。今日はもう登山はしないですし、ロープウェイの始発の時間に合わせて、のんびり過ごして撤収をするだけ。
今朝少し登ってきた、という方がいて話をお聞きしたけど、丸山までも到達できず撤退してきた、と言っていました。そりゃそうでしょね、ずっとラッセル間違いないですから。

ラッセルしての下山

とはいえ、下山は下山でラッセルです。一晩降り続いた雪でトレースは一切消えていましたが、幸い山荘からロープウェイまでは目印のリボンがあるので迷うことはなく、これも良い経験と思って楽しんで歩いて帰ってきました。下山はピッケルやトレッキングポールではなく、ショベルを片手に下山しました。ショベルを持って歩くのは流石に慣れていなくて、テント泊の荷物を背負って、この足場の悪いチョイラッセルで1時間ほど歩いて、くたびれました。

ロープウェイは真っ白で景色は見えず、平湯温泉までのバスも交通が乱れて、チェーンを持っていない車があちこちでスタックしているようでした。でも、無事東京に帰ることができて、これで冬の西穂独標の旅は終わりです。楽しかった1泊旅行、少し成長できたと思います。今度は雷鳥沢あたりで雪中キャンプをしたいな、と思いました。それでは、また。

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